10月11日付の日経産業新聞「ベンチャー仕掛け人」に掲載されました - 2007年10月24日 -

堀憲次教授へのインタビューが10月11日付の日経産業新聞「ベンチャー仕掛け人」に掲載されました。
新薬開発にしのぎを削る製薬企業。コスト減を狙い新薬候補物質の合成方法を実験によらず電算機で推論する研究が盛んだ。独立行政法人「科学技術振興機構」が二〇〇七年度、「大学発ベンチャー創出推進」分野で補助事業に採択した堀憲次山口大大学院教授の研究は、合成経路にとどまらず、その実現可能性も計算する。起業への道筋を聞いた。
-研究の意義は何なのか。
「日本の製薬企業の売上高に占める研究開発費は十五%超だ。しかし国際競争力は低下している。研究期間の短縮と実験コストの削減が急務で、人海戦術的な実験から論理計算への移行が課題となっている。コンピューターによる新薬候補物質の合成経路開発は、ゲノム装薬などと並ぶ技術革新となりうる」
-核となる技術は。
「これまでは有機化学者の頭脳に頼っていた物質の合成経路開発の主要部分を、計算化学と情報化学を融合した方法で代替するシステム開発を進めている。まず、新薬の候補物質の合成経路を網羅的にコンピューターに提案させる。しかし、これだけでは不十分だ。合成経路の提案が多くなるほど実証実験の手間もまた増えるからだ」
-解決策は。
「重要なのはコンピューターが導いた網羅的な合成経路を実現可能性によって『絞り込む』プロセスだ。実験条件に近い状態を記述できる理論計算で反応解析を行い、合成経路の容易さのランキングを行う。これにより成算の低い実験は行わずにすむ。この技術で一つの新薬あたりの研究期間を半減できる」
「理論計算に重要なのが、独自に開発した化学物質の遷移状態データベースだ。反応解析の時間を短縮するため、『光延反応』など著名な反応を含め、データ件数を三千件にまで増やす。こうした手法は国内外にも存在せず、高い優位性があると自負している」
-起業の計画は。
「研究室の院生を代表とした会社を二年後に設立。製薬、化学会社からの受託解析やコンサルティングで設立三年目に売上高三億四千万円、経常利益一億五千万円を見込んでいる」

「逆もまた真」証明に挑む
堀教授は、「フロンティア電子理論」でノーベル化学賞を受賞した福井謙一氏に師事。83年(昭58年)京都大学大学院工学研究科博士課程終了。00年山口大学工学部応用科学工学科教授、06年同大大学院理工学研究科教授。同大地域共同研究開発センター長も努める。
コンピューターによる創薬は「インシリコ」と呼ばれる。堀教授の研究の優位性は、分子がどう形を変えるかを量子化学計算で予測するデータベースの構築だ。「国内外でも例がない」。実験で合成が成功した場合、必ず計算で証明できる。計算で予測した合成経路は実験で再現できるのか。「逆もまた真」であることの証明に挑んでいる。