2月26日付の宇部日報に当社の記事が掲載されました - 2008年03月05日 -

コンピュータで「薬」を作る -in silico合成経路開発-
「薬」として効果があると確認された化合物を薬として販売するためには、もちろんその副作用が無いかどうかの確認ですが、医薬品として販売するためには大量に 「化学合成」をする方法を開発することが必要です。これを「合成経路開発」といいますが、これまではその方法を「人」が考え、「人」が実際に手を動かして作ってきました。 最近では、新たに開発される薬物はとても複雑な形をしているためにその合成方法は複雑で、優秀な研究者でさえたくさんの試行錯誤を伴う実験を行わなければなりませんでした。 我々が提唱している方法は、新たに開発している遷移状態データベース(TSDB)を用いてin silico(コンピュータ上)実験を行うことにより、これまで「人間」が苦労して行ってきた夥しい数の実験を、 数回の実験に減少させ、1~2ヶ月の間に開発を可能とすることができる画期的なものです。この方法が工業的に利用できれば,新薬の合成経路開発に必要とされる開発期間の短縮やコスト削減につながり, 合成化学の世界に革命を起こすことができます。
    in silicoを用いた研究開発
「理論計算」を用いればこのマジックを実現できることを、ノーベル賞学者であるDirac先生は20世紀の始めに予測しました。しかしながら20世紀のうちには、 実験結果をシミュレーションすることができるほど十分に高速なコンピュータは実在したものの、我々が気軽に利用することはできませんでした。21世紀に入って洗練されたコンピュータの並列化技術 (数十~数百台のコンピュータを一度に計算に使う技術)と高速に理論計算を実行させるハードウエア技術の大幅な発展しました。そのためこれまで不可能であった溶媒の効果を含めたシミュレーションまでもが可能となってきました。 すこし大げさに言えば、フラスコやビーカの中で何が起こるかを予測できるようになったのです。 上に書いてきたようなことを行う我々の研究プロジェクト『ケミカルイノベーションを目指した新薬のin silico合成経路開発』が,科学技術振興機構(JST)が公募した独創的シーズ展開事業に昨年6月採択されました. この事業は、大学の研究成果を基に「大学発ベンチャー」を創出することにより、大学の研究成果を社会へ還元することを目的としたものです。このプロジェクトでは、我々が独自に開発した化学物質に関する遷移状態データベースを用いて in silicoでの合成経路開発技術の事業化を目指しています.現在、社長就任予定の山口君(博士後期課程3年生)と二人三脚で、山口大学にあるインキュベーション(卵を孵化させるという意味)施設の一室を借りて、 他二人の研究員と共に起業の準備を行っています。来年6月に㈱TS Technology設立を目指し、その何年か後には「ポルシェ」を乗り回せるほどの会社に成長させることを夢見ながら、日夜研究に励んでいます。