宇部日報に掲載されました(2010年8月) - 2010年08月14日 -

山大発のベンチャー好発進 生産過程を効率化、業界注目
山口大大学院理工学研究科博士後期課程を修了した山口徹さん(ニ九)が昨年、起業した同大発のベンチャー企業「TSテクノロジー」が創業一年にして、好調だ。 膨大な時間と手間がかかる新薬などの合成方法や合成の可能性を、実験によらず計算機で推論する解析技術を武器に、大手製薬、化学企業など二十八社と取引を行っている。 生産過程を効率化させることでコストと二酸化炭素排出を大幅に削減。環境にも優しい研究や開発を支援する企業として急速に注目を集めている。 同会社は、常盤キャンパス内のビジネスインキュベーション内に設立。山大大学院修了生ら四人がスタッフ。 主技術は有機化学者の経験と知識に頼っていた新薬開発を、コンピューターで代替するシステム。化学物質の反応パターンを蓄積した「遷移状態データベース」を、 堀憲次・工学部長と共同開発し、論理計算に使う。 実験による合成では、膨大な物質から候補物質を絞り、試行錯誤を繰り返して目的の物質を合成していくが、このシステムでは、まず完成物質を発見。 合成可能な物質や、安価に生成できる合成経路を逆ルートで絞る。 企業の有機合成分野の研究開発は、人手による実験を行っており、膨大な開発期間と人件費がかかっていた。試行錯誤で出る廃棄物の処理にもコストがかかっていた。 研究受託した大手化学会社のケースでは、半導体の回路形成工程で用いる機能性物質「アダマンタン誘導体」の生成を、常温で副生成物を出さないで済む方法を提案。製造コストを大幅に削減したり、冷却や副生成物を除去する工程をなくし、二酸化炭素の排出も半減することが期待されている。 化学合成業界では、一人の社員が年間に十トンの二酸化炭素を出すとされる。新システムでは期間の短縮で、三割強の排出削減が可能という。 こうした手法で企業の研究開発を受託して支援する事例は、世界的にもない。医薬品、化学品、高分子・機能性材料の合成は成長分野で、今後、同社の成長が期待される。 同システムは実績を積むほどデータベースの精度が高まっていく強みがある。現時点では精度は八割程度という。「同大と連携しリアルな実験結果と照らし合わせ、精度を一層高めていきたい」と山口社長は話す。十年後に十億円の売り上げを目指す。