(S)-2,6-dimethylchroman-4-one合成経路開発

  1. ターゲット:Leontopodium alpinum (Edelweiss,エーデルワイス)に含まれる2,6-Dimethyl-chroman-4-one
    • この化合物は、高山に自生するLeontopodium alpinum種の花の根に含まれる天然物。
    • アルプス地方で、以下の効能の薬剤として使われてきた。
      ・下痢、赤痢の治療
      ・アストリンゼン(収斂剤)
      ・強壮剤
    • John Walshらが (S)-2,6-dimethylchroman-4-oneの単離に成功.
    • 関連化合物を含めて複数の合成法が報告されている.
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  2. 合成経路設計システム
    • 従来は,合成経路設計は優秀な合成化学者のみに可能であると考えられてきた.
    • 開発を行うためには,多くの実験を行う必要があり多大な労力と時間が必要であった.
    • 現在では,船津らの開発した合成経路設計システム(KOSP,TOSP)を用いれば,深い有機合成の知識なしに設計することが可能となった.


  3. KOSPにより創出された合成経路

    • 創出された合成経路のうち,可能性の高い6つの合成経路を選択



  4. 合成経路の反応機構

    • RouteAとRouteB:フッ化物または塩化物のSNAr反応
    • RouteC:光延反応
    • RouteD:Michael付加反応
    • RouteE:Mannich反応

  5. 計算結果


    • Route A,及び Route B を用いて標的化合物を合成することは不可能である.
    • Route Cに関して,計算結果は実験的に得られた結果と一致した. Kevin J. Hodgetts, ARKIVOC 2001 (xi) 74-79
    • Route Dを用いて目的化合物を合成できる可能性があると計算された.実際の合成実験を行ったところ,収率76.4%(ラセミ体98.6%LC)を得られた.
    • これらの結果は計算化学的手法による合成経路の可能性の評価が有効であることを示している.