計算化学と情報化学を融合した合成経路開発 (in silico合成経路開発)

これまで新たな合成経路開発や製造プロセスの改良(以下の図を参照)は,実験でしかできないと思われてきました.
しかしながら,近年のコンピュータの高速化や反応解析技術の進歩は,計算化学的手法をこの分野に適用することが可能となっています.

  • 貞富博隆,堀憲次,「計算化学と情報化学を融合した(S)-2,6-dimethylchroman-4-one合成経路開発」,2006年日本化学会西日本大会(那覇)で発表

  • Kenzi Hori, Hirotaka Sadatomi, Katsuhiko Okano, Atsuo Miyamoto, Saori Hayashi, Hidetoshi Yamamoto. "A computational method for developing new synthesis routes by fusing Computational Chemistry and Chemi-infomatics. An attempt for synthesis routes of ethyl and benzyl methacrylate." この論文はJ. Comp. Aided Chem. 2006に掲載予定です.

  • 堀 憲次, 岡野 克彦, 吉村 和明, 西田 晶子, 山本 豪紀,「合成経路設計システムTOSPの創出する合成経路の可能性に関する計算化学的検証.置換フラン-2,3-ジオンへの適用」,J. Comp. Aided Chem., .6, 30-36(2005).(この論文はここからダウンロードできます).

     近年、AIPHOS、TOSPやEROSをはじめとする合成経路設計システムは実用段階となっている。しかしながら、これらシステムが創出する合成経路のすべてを実験的に検証することはきわめて困難である。計算化学は化学反応の機構を研究する上で強力なツールで、この手法を合成経路設計システムが創出した目的化合物の合成経路に適用した反応解析を行うことにより、その経路で合成が可能かどうかの判断ができると期待される。本研究では、置換フラン-2,3-ジオンに対して、既に知られている合成経路とTOSPプログラムが創出した2つの合成経路の計算化学的検討を行い、計算化学的手法が合成経路の可能を評価できるかどうかについて検証を行った。